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Arahabaki Institute of Architecture




  アラハバキ建築研究所
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      TEL:0172-89-1855               FAX:0172-89-1856   

長坂町の家





   ■ 長坂町の家 (古民家再生) ■


弘前市中心部の閑静な住宅街にある、江戸末期から続く武家屋敷を、増改築した建物です。
古い建物を探していた施主は、この土地と建物を一目で気に入り、買い求めました。
手を加える必要がない所は、そのまま残し、現代の生活や自分たちの感覚にどうしても合わない所は、改築と少しの増築で解決しました。
それから、古(いにしえ)の日本家屋の心地よい記憶を継承するため、解体材は出来るだけ再利用しています。
例えば、板材は床や外壁に利用しています。
建具も、それに合わせ枠を造り再利用しています。
基礎として使われていた石は、雨落ち砂利の押さえとして活用しています。
それに、土壁や三和土(たたき)や敷石など、昔からの工法を取り入れている所もあります。
新たに製作した家具や建具も、無垢の杉材で造りました。
新旧両方の良さを取り入れた、ある意味最も贅沢な住まいのような気がしています。

長坂道路-1
前面道路から見た所です。
左端に、2台分のカーポートとその為の門を設けましたので、それに合わせ、薬医門を右方向に移設しました。
道路のレベルが昔に比べ高くなっているので、門の嵩上げも行いました。
ここから見える住宅部分は、手をつけておりませんが、正面に見えるのは来客用の玄関です。


長坂道路-2
車用の門を閉じた所です。
4枚の折戸は、既存の塀や薬医門に合わせ、黒く染めました。
庭は、既存のままです。


長坂カーポート-1
車用の門を内側から見た所です。
床には、以前から敷地にあった石と、石のむろじさんに協力して頂いた石を敷いております。


長坂カーポート-2
カーポートから新しい玄関を見た所です。
右端の建物は、既存のままです。


長坂ポーチ-1
玄関を正面から見た所です。
屋根上に、天窓と時計ストーブ用の煙突が見えます。
正面壁は古来からの方法(小舞+土壁)を下地とした漆喰と、青森ひばの腰壁です。


長坂ポーチ-2
玄関の引き分け戸を開けた所です。
庭と一体化した使い方も出来ます。
引き分け戸の上の欄間を開ければ、外出時でも自然換気を行う事が出来ます。
左側には、縁側が見えます。


長坂ポーチ-3
右半分は既存のままですが、左半分はポーチ部分だけ増設した玄関です。
ポーチの柱と梁は、青森ひばです。


長坂ポーチ-4
ポーチの床は、古来からの工法にこだわり、コンクリートを使わずに石だけで仕上げました。
種類は、黒絹石という御影石で、石だけでも安定するように厚さは45mmあります。
柱脚は、元々あった石臼を再利用した物です。
左上は屋根の雨水を受けている樽で、庭への散水に利用しています。


長坂外観-1
増築部分から、玄関方向を見た所です。
漆喰壁は、面積が大きすぎるとひび割れしますので、横桟を入れ、小割りにしています。


長坂外観-2
増築部分を南西角から見た所です。
出隅は、青森ひばの柱を現しにしております。
左端は既存蔵への渡廊下です。
雨落ちの見切りに使っている石は、解体部分の床下から出て来た物を再利用しました。


長坂外観-3
西から見た所です。
西日対策も兼ね、窓面積は小さく押えています。
オイルタンクは、高さも低く、最も外観を阻害しない物を選びました。


長坂外観-4
既存の蔵への渡廊下です。
渡廊下を通り抜けて、そのまま裏へ抜ける事も出来ます
構造は新しいのですが、外壁と建具は既存の物を再利用しました。


長坂裏-1
増築部分を裏から見た所です。
手前は渡廊下です。
こちら側の面も、既存の壁と建具を再利用しています。


長坂裏-2
同じく増築部分を裏から見た所です。
奥の庇の出が大きな建物は、蔵です。


長坂玄関-1
玄関です。
ここは改装前は居間でしたが、昔の平面付きの地図を見ると、元々はここが玄関だった様です。
ここでも、来客とお茶を飲みながら、くつろぐ事が出来ます


長坂玄関-2
玄関から、座敷方向を見た所です。
床は、解体部分の床板を再利用しました。
玄関引き分け戸からの光は抑えられていますが、天窓を設けましたので明るい空間になりました。
左の襖は、元のままです。


長坂玄関-3
土間床は、古来の工法にこだわった土の三和土(たたき)です。
時計ストーブは、暖房の他に、調理器具としても活躍しています。
解体によって出た木材は全て、仕上として再活用するか、薪として利用しています。


長坂玄関-4
正面に見える家具は、既存の水屋箪笥を修理した物で、下足箱として活用しています。
その奥の建具は、既存の物を再利用した物で、ここからリビングに入ります。



長坂玄関-5
床板と上框は、解体材の再利用です。
内部は、下足箱として利用しています。


長坂玄関-6
床板の一部を取り外して、収納として利用しています。


長坂玄関-7
この柱は、下を継ぎ足しています。
柱脚には既存の石臼を再利用しています。


長坂リビング-1
リビングから玄関方向を見た所です。
左の本棚は、県産の杉の無垢板を加工して作られた本棚です。


長坂リビング-2
玄関方向から見たリビングです。
手前は、元々キッチンや洗面・浴室だった所を改装した部分で、奥は増築した部分です。
以前は平らな天井で圧迫感があったのですが、天井裏には黒光りする立派な梁がありました。
屋根に合わせ勾配天井とし梁を見せましたので、開放感があります。
壁と天井は漆喰です。


長坂リビング-3
左側は、増築した縁側です。
障子も既存を再利用しました。
縁側と障子を通した光は、柔らかく拡散し、部屋全体を照らします。
構造材は、出来るだけそのまま使用し、構造的に不足している部分は補強しています。


長坂リビング-4
増築部分を奥から見た所です。
増築の構造は、県産の杉と青森ひばを使用しています。


長坂リビング-5
リビングの一部です。
家具は、全て県産杉の無垢板です。
上は、存在感がある黒壁でしたので、そのまま残しました。
巾木も、既存の野地板材を再利用しています。


長坂リビング-6
既存の水屋箪笥を、食器戸棚として再活用しています。


長坂リビング-7
床は杉の無垢板を使用していますが、愛犬が歩きやすいように、取り外しの可能なコルクタイルを敷いています。


長坂縁側-1
縁側です。
ガラス戸も障子も、既存の物を再利用しました。
一部に、施主さんお手製の取り外し可能な防虫ネットがあります。
天井に見える蛍光灯のような物は、上げ下げ可能な物干し竿です。
床は、解体部分の床板を再利用しました。


長坂縁側-2
縁側からリビングを見た所です。


長坂洗面-1
リビングから洗面に向かう廊下を見た所です。
左側には、ロールブラインドで隠す事の出来る洗濯機置場と、WCがあります。


長坂洗面-2
洗面です。
カウンターは、ケヤキに漆を塗った物で、洗面器は理科の実験用です。


長坂渡廊下-1
蔵の方向へ行く為の渡廊下です。


長坂渡廊下-2
渡廊下の一部です。
垂木には、物干し用のフックを4ヶ所、取付けています。
外壁は、解体建物の壁材を再利用しました。
右側の一部壁には、昔の新聞紙が貼られているのが見えます。
左側の壁は、既存の渡廊下です。


長坂夜景
夜景です。


長坂町HP断面
断面図


長坂町の家が、「2013年 日本建築の美」という全国版のこよみに採用されました。
長坂こよみ



改修前のこの建物は、基礎は玉石を並べただけですし、構造としての壁は一切ありません。
床は、地盤の不等沈下により傾いている所もありました。
現代の木造建築の基準から考えれば、これまで壊れなかったのが不思議に思えるような建物です。
しかし、これまでの幾多の地震や風雪に、しっかりと耐えてきました。
おそらく、古来から受け継がれて来た匠の知恵と技とで、ガッチリと組み合わされた太い土台や柱・梁と、代々の住人が注いで来た愛情とで、これまでの長い年月を乗り越えてきたのだと思います。
しかし、柱や梁などに比べると、床根太や屋根垂木などの主ではない構造材は、意外な程小さな部材でした。
根太や垂木が折れた時は、そこだけを直せば済みます。
しかし、主となる構造部材が壊れた時は、建物全体の崩壊に直結すると言う事を、いにしえの匠は充分に理解していたのだと思います。
お風呂の排水管が外れていたらしく、そこだけは土台も含めボロボロでしたが、主となる構造材には、ほとんど痛みは見られませんでした。

建物を守る為の工夫は、他にも沢山見られます。
低く深い庇は、外壁を雨から守っています。
玉石の基礎は、床下に湿気を貯める事がありません。
内外ともに構造材を現しにした壁(芯壁)は、木材の呼吸を妨げません。
それから、建物を囲うように巡る縁側は、建物本体を雨風から守る働きの他に、内部の住み心地を快適にする効果もあります。
本物の素材は、何度でも再利用できます。
少々煤けても、それの持つ本来の美しさは変わりません。
障子を透過した光は、穏やかに空間を包んでくれます。
畳に座り、縁側を通して庭を見たときには、内部と庭が一体化したような心地よさを感じました。

近代から現代に掛けて、人間の生活様式も、建物の形も劇的に変わりました。
それに伴い、先人の残してきた物を顧みる機会が、激減した様な気がします。
本当の豊かさとは,何なのだろう。
我々はもう少し謙虚に、古来からの知恵に学ぶべきではないだろうか。
この建物を通して、そのような事を改めて感じました。


所 在 地   弘前市長坂町
延床面積   284㎡
 増築面積  50㎡
 改装面積  63㎡
 その他面積 171㎡
構造規模   木造 2階建て
竣  工   2010年12月
施工会社   (株)村上組


次の仕事 「春 日 町 の 家」 へ。


ここに掲載されている写真などの著作権は、アラハバキ建築研究所にあります.




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  1. 2010/11/09(火) 11:57:09|
  2. 仕事・・・住宅|
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